Classiques japonais avec furigana
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ぜつえんたい
絶縁体
豊島 与志雄
Lisez 絶縁体 (ぜつえんたい) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 752 caractères · 38 écrans
どうも、何か用件を持っていると、それを片付けないうちは、市木さん相手には落着けないのだった。先方があまり落着きすぎてるせいかも知れなかった。
私は率直に、竹田さんから頼まれたことを話し、水洗便所の件を切り出した。市木さんはちらと眉根を寄せてから、事もなげに言った。
「あれはいけませんな。日本の電燈は、停電するように出来ている。日本の水道は、断水するように出来ている。日本の道路は、躓いて転ぶように出来ている。だから、わたしのこの足のような始末です。水洗便所の不始末は、足首と違って、手がつけられませんからな。だから、わたしは断りましたよ。」
市木さんの意向こそ、決定的で、手がつけられない感じだった。私はそれで役目を果したつもりで、二度と話し出さないことにした。
しばし間を置いて、市木さんはふいに言った。
「いったい、ひとの家のことをあれこれ干渉する根性がいけませんよ。こんど竹田さんが来たら、そう言ってやりましょう。」
そういう点になると、私はなお自分の意見を持ち出しかねた。実は、市木さんの足の捻挫を知った時、妻に煮物でもさせて持って行かせようかと咄嗟に思ったのだが、それも余計な干渉だと言って怒られそうな気がした。