Classiques japonais avec furigana
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ろうじゅんさ
老巡査
夢野 久作
Lisez 老巡査 (ろうじゅんさ) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 8 237 caractères · 17 écrans
つまり被害者の家には申合わせたようにS・S式軽油ストーブが在ったところから、もしやと思って京阪神地方の煖房具店を調査すると果せる哉、東京から廻送して来た写真の女が開いている軽油ストーブ店が三の宮で発見されると同時に、その店の主人と雇男が犯人に相違ないことが判明したものである。しかもこれを白昼に襲撃して一挙に三人を逮捕することが出来たのは、何といっても当局の偉功であると、極力賞讃しているのであったが、これに対して東京の新聞は申合わせたように事件の殊勲者たる睦田老人の事ばかりを主として、堂々たる写真入りで掲載していたので、両方の新聞を読んだ人は思わず微苦笑させられたのであった。
警視庁に呼出された睦田元巡査は、総監以下、各係長、新聞社員等の立会の上で、倉川男爵の手から三千円の懸賞金を授けられたが、七ツ下りの紋付袴を着けた彼は殆んど歩く力もないくらい青ざめていた。
それでも辛うじて床の上を前の方によろめき出ながら、男爵の感謝の言葉を受けるには受けたが、同時に自分の失態の代償として、大枚のお金を受取る心苦しさを云おうとして云い得なかった彼は、顔の筋肉をヒクヒクと引釣らせながら、涙をダラダラと流して男爵の顔を見上げた。