Classiques japonais avec furigana
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せいかぞく
聖家族
堀 辰雄
Lisez 聖家族 (せいかぞく) de 堀 辰雄 (ほりたつお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 16 074 caractères · 33 écrans
彼はその少女の顔よりも彼女の母のそれの方をもっと新鮮に見出した。
絹子の方でもまた、少女特有の敏感さによって、扁理の気持が彼女から遠くにあることを見抜いたらしかった。彼女は黙ったまま、二人の会話にはいろうとしなかった。
彼女の母はすぐそれに気づいた。そして彼女の微妙な心づかいがそれをそのままにしておくことを許さなかった。彼女は母らしい注意をしながら、その二人をもっと近づけようとした。
彼女はそれとなく扁理に娘の話をしだした。――或る日、絹子は学校友だちに誘われるままに初めて本郷の古本屋というものに入ってみたという。彼女がふとそこにあったラファエロの画集を手にとって見ると、その扉には九鬼という蔵書印がしてあった。そして彼女はそれを非常に欲しがっていた……
突然、扁理が遮った。
「それは僕の売ったものかも知れません」
夫人たちは驚いて彼を見上げた。すると彼は例の特有の無邪気な微笑を見せながらつけ加えた。
「九鬼さんにずっと前に貰ったのを、あの方の亡くなられる四五日前に、どうにも仕様がなくなって売ってしまったんです。今になってたいへん後悔しているんですけれども……」