Classiques japonais avec furigana
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おに
聴雨・蛍 織田作之助短篇集
織田 作之助
Lisez 聴雨・蛍 織田作之助短篇集 (おに) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 19 483 caractères · 41 écrans
しかし、この明白さに新吉は頼っておられなかったのだ。よしんば、その公式で円い玉子が四角に割り切れても、切れ端が残るではないかと考えるのだ。
新吉は世相を描こうとしたその作品の結末で、この切れ端の処理をしなければならなかった。が、三時になっても、それが出来なかった。一つには、もうすっかり頭が疲れ切っていた。考える力もなく、よろよろと迷いに迷うて行く頭が、ふと逃げ込んで行く道の彼方には、睡魔が立ちはだかっている。
新吉の心の中では火のついたような赤ん坊の泣声が聴えていた。三時になれば眠れると思ったのに、眠ることの出来ない焦燥の声であった。苦しい苦しいと駄々をこねていた。どうせ間に合わないのだから、一月のばして貰って、次号に書くことにしようと、新吉は赤い眼をこすりながら、しょんぼり考えた。しかし、新吉は今朝東京のその雑誌社へ「ゲ ンコウイマオクッタ」オマチコウ」とうっかり電報を打ってしまったのだ。もう断るにしては遅すぎる。しかし間に合わない。三時を過ぎた。
編輯者の怒った顔を想像しながら、蒲団のなかにもぐり込んで、眼を閉じた途端、新吉はふと今夜中に書き上げて、大阪の中央郵便局から速達にすれば、間に合うかも知れないと思った。