Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

えんしょ

艶書

山本 周五郎

Lisez 艶書 (えんしょ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 25 027 caractères · 50 écrans

Aozora Bunko

彼の口から(ときをおいて)瀕死の人のようなあらい息のもれるのが、出三郎に聞こえた。

「刀を捨てろ、さもないと――」

半兵衛がもういちど叫んだ。とたんに、相手は足を踏みはずし、「わっ」というような声をあげながら庭へ転落した。

「逃がすな出さん」

もちろん、出三郎は走せつけた。相手はどこかをくじいたとみえ、躯をねじりながら、刀を投げだしてうめいた。

「斬れ」とその男はわめいた、「斬ってくれ」

出三郎は刀をつきつけたまま半兵衛を見た。半兵衛は広縁からのぞいて見ながら「縛ろう」と云った。

「ほかの四人が助からない場合に生き証人として必要だ、そいつの襷で縛ってくれ」半兵衛は懐紙を出してたんねんに刀をふき、鞘を拾っておさめながら云った、「おれは役所と医者へ人をやるようにいって来る。縛るのは簡単でいいぜ」

そして彼は渡り廊下の向こうへ去った。

――これだけの騒ぎに誰も気がつかないのか。

出三郎は不審に思ったが、そのときはじめて、母屋のほうの二階で三味線や太鼓のにぎやかな囃しが聞こえた。いつそんな鳴物が始まったかまったく気がつかなかった、こちらは離れているし、時間もごく短いあいだの出来事だから、あのにぎやかな囃しでは気がつかないのも当然であろう。