Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Lisez 花と龍 (はなとりゅう) de 火野 葦平 (ひのあしへい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 410 131 caractères · 824 écrans

Aozora Bunko

掏摸の姿はちらちらとしか見えない。よれよれの単衣に、千断れかかった三尺をしめた、もう六十を越えた男だ。無帽の頭は五分刈で、まっ白い。草履はとっくに脱ぎすてて、必死で走っている。

金五郎は速力を落した。自分が追っかけなくとも、掏摸がかならず捕まることがわかったからだ。まだ午後三時の真昼間、場所は東京駅前の雑沓、掏摸はよぼよぼに近い老人、到底、逃げ終せることは不可能である。

「掏摸だ。掏摸だ」

と、掛け声のように、絶叫する群衆の声を聞いて、交番から、巡査も駈けだして来た。

金五郎は安心して、ゆっくり歩いた。あわただしい気持ながら、心に余裕が出来て、あたりを見まわしたりもした。赤煉瓦の荘重な東京駅、中央郵便局、聳えたつ丸ノ内ビルディング、その他の宏壮華麗な建築物の列、はるかに望まれる宮城、コンクリートで堅められた駅前広場、走る電車、自動車、人力車――大都会の美しい玄関を、感歎して眺めた。

すると、金五郎は妙なことに気づいたのである。

やはり、ほんとうの関心は掏摸に向けられていたのだが、その掏摸が、こけつまろびつ、がむしゃらに逃れて行く姿を見ていて、ほっと胸にひびいて来たものがあった。