Classiques japonais avec furigana
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よしとししゃせいちょう
芳年写生帖
野村 胡堂
Lisez 芳年写生帖 (よしとししゃせいちょう) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 626 caractères · 26 écrans
明治元年五月十五日の夕刻。
その時芳年は三十歳、御家人の子に生れて武士の血を享けた筈ですが、月岡雪斎に養われ、菊池容斎、葛飾北斎の風を学んで、心も姿もすっかり町絵師になり切って居りました。
浅葱の股引に草鞋がけ、桐油に上半身を包んで、目ばかり出した風体は、腰の矢立てと懐の画帳が無かったら、葛飾在から来た水見舞と間違えられるでしょう。
油のような生温かい雨が降るのに、芳年の身体は、ガタガタ小刻みに顫えて、時々はしゃっくりをして居ります。その上足許も不確かで、ヒョロヒョロと行っては、ぬかるみに足を取られて、泥の中へヘタヘタと坐ったりしました。
そのくせ、藪の中や道の上に、斬られて死んでいる死骸を見ると、彰義隊であろうと官兵であろうと一々覗いて、その相好と、歪んだ姿態を見極めずには居られなかったのです。
「ひどい傷だが、――仏様のような穏かな顔をして居る」
そんな無事な死顔は、芳年の興味を引かなかったのでしょう。
「これは凄い」
時々は死体の前に踞んで、懐から出した半紙横綴の帳面に矢立の筆を抜いて――細雨をかばい乍ら、写生の筆を走らせました。
不意に――