Classiques japonais avec furigana
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くさもみじ
荷風随筆集(下)
永井 荷風
Lisez 荷風随筆集(下) (くさもみじ) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 30 512 caractères · 63 écrans
再び瓦斯ストーブに火をつけ、読み残した枕頭の書を取ってよみつづけると、興趣の加わるに従って、燈火は々として更にあかるくなったように思われ、柔に身を包む毛布はいよいよ暖に、そして降る雪のさらさらと音する響は静な夜を一層静にする。やがて夜も明け放れてから知らず知らずまた眠に堕ち、サイレンの声を聞いて初て起き出る。このような気儘な一夜を送ることのできるのも、家の中に気がねをしたり、または遠慮をしなければならぬ者のいないがためである。妻子や門生のいないがためである。
午後も三時過ぎてから、ふらりと郊外へ散歩に出る。行先さだめず歩みつづけて、いつか名も知らず方角もわからぬ町のはずれや、寂しい川のほとりで日が暮れる。遠くにちらつく燈火を目当に夜道を歩み、空腹に堪えかねて、見あたり次第、酒売る家に入り、怪しげな飯盛の女に給仕をさせて夕飯を食う。電燈の薄暗さ。出入する客の野趣を帯びた様子などに、どうやら『膝栗毛』の世界に這入ったような、いかにも現代らしくない心持になる。これもわが家に妻孥なく、夕飯の膳に人の帰るのを待つもののいないがためである。
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