Classiques japonais avec furigana
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やぶのなか
藪の中
Lisez 藪の中 (やぶのなか) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 8 487 caractères · 17 écrans
てしまいました。
その内にやっと気がついて見ると、あの紺の水干の男は、もうどこかへ行っていました。跡にはただ杉の根がたに、夫が縛られているだけです。わたしは竹の落葉の上に、やっと体を起したなり、夫の顔を見守りました。が、夫の眼の色は、少しもさっきと変りません。やはり冷たい蔑みの底に、憎しみの色を見せているのです。恥しさ、悲しさ、腹立たしさ、――その時のわたしの心の中は、何と云えば好いかわかりません。わたしはよろよろ立ち上りながら、夫の側へ近寄りました。
「あなた。もうこうなった上は、あなたと御一しょには居られません。わたしは一思いに死ぬ覚悟です。しかし、――しかしあなたもお死になすって下さい。あなたはわたしの恥を御覧になりました。わたしはこのままあなた一人、お残し申す訳には参りません。」
わたしは一生懸命に、これだけの事を云いました。それでも夫は忌わしそうに、わたしを見つめているばかりなのです。わたしは裂けそうな胸を抑えながら、夫の太刀を探しました。が、あの盗人に奪われたのでしょう、太刀は勿論弓矢さえも、藪の中には見当りません。しかし幸い小刀だけは、わたしの足もとに落ちているのです。