Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ぐびじんそう

虞美人草

夏目 漱石

Lisez 虞美人草 (ぐびじんそう) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 198 559 caractères · 401 écrans

Aozora Bunko

「さよう」と小野さんは間を延ばして答えたが、

「例えば」と聞き返した。

「名前なんか忘れたが、何でも女をごまかしたり、女房をうっちゃったりしたのがいるぜ」

「そんなのはいないでしょう」

「なにいる、たしかにいる」

「そうかな。僕もよく覚えていないが……」

「専門家が覚えていなくっちゃ困る。――そりゃそうと昨夜の女ね」

小野さんの腋の下が何だかじめじめする。

「あれは僕よく知ってるぜ」

琴の事件なら糸子から聞いた。その外に何も知るはずがない。

「蔦屋の裏にいたでしょう」と一躍して先へ出てしまった。

「琴を弾いていた」

「なかなか旨いでしょう」と小野さんは容易に悄然ない。藤尾に逢った時とは少々様子が違う。

「旨いんだろう、何となく眠気を催したから」

「ハハハハそれこそアイロニーだ」と小野さんは笑った。小野さんの笑い声はいかなる場合でも静の一字を離れない。その上色彩がある。

「冷やかすんじゃない。真面目なところだ。かりそめにも君の恩師の令嬢を馬鹿にしちゃ済まない」

「しかし眠気を催しちゃ困りますね」

「眠気を催おすところが好いんだ。人間でもそうだ。眠気を催おすような人間はどこか尊といところがある」