Classiques japonais avec furigana
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われはうたえども やぶれかぶれ
蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ
室生 犀星
Lisez 蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ (われはうたえども やぶれかぶれ) de 室生 犀星 (むろうさいせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 45 726 caractères · 90 écrans
ただ、一枚の新聞を折り返して読むよりほかに、長い物は読めない時間と時間にきめられた仕事は、八分とか十分間置きに放射線室の患者を廊下にみちびき出さねばならず、機械の運転を患者ごとにあらためねばならなかった。二週間くらいの交替勤務らしく最初に会った医師には、とうとう行き会うことがなかった。地下室の重厚頑丈な混凝土の冷却しきった通路は、どうかすると両側の壁面が相互にせり出て圧搾して来るような受射後の疲労感が足もとをふらつかせた。その日もエレベーターから降りて通路に出ようとする、コンクリの壁面の曲り角に私がひょいと現われた時に、向うの放射線室にみちびかれて這入って行った一人の男が、これも、ひょっと私の方を見た。その眼のぎょろりとした口もとのぐにゃぐにゃしたのに、なりの高い小肥りの肩の怒ったあんばいは、例のいつでもエレベーターの先乗りをした男であった。ここに来ているとすれば再入院したものに違いない、彼はとうに退院している筈なのだ。私は待ち合いの床の椅子に腰をおろすと時計を見入った。十分すればあの男の顔が見られる。少しも慈悲というものをもたない強い眼つきに対きあえるのだ。