Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

はえおとこ

蠅男

海野 十三

Lisez 蠅男 (はえおとこ) de 海野 十三 (うんのじゅうざ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 118 129 caractères · 237 écrans

Aozora Bunko

帆村は驀地に橋の上をかけぬけた。それから山道に懸ったが、やっと前方に怪人の乗った自動車の姿をチラと認めた。

「うむ、向うの方へ逃げていくな」

道が悪くて、軽い車体はゴム毯のように弾んだ。そのたびごとに、樽の上に御座る店員先生は悲鳴をあげた。

「モシ、樽の上のあんちゃん。この道はどこへ続いているんだね」

暴風雨のような空気の流れをついて、帆村が叫んだ。

「この道なら、有馬へ出ますわ。お店と反対の方角やがナ」

店員先生が、半泣きの声で答えた。

「うむ、有馬温泉へ出るのか。――あと何里ぐらいあるかネ」

「そうやなア。二里半ぐらいはありまっせ」

「二里半。よオし、なんとしても追いついてやるんだ」

帆村の姿と来たら、実にもう珍無類だった。これはあまりにも勇ましすぎた。若い婦人に見せると、気絶をしてしまうかも知れない。なにしろ、正面からの激しい風を喰って、どてらの胸ははだけて臍まで見えそうである。その代り背中のところで、どてらはアドバルーンのように丸く膨らんでいた。ペタルの上を踏まえた二本の脚は、まるで駿馬のそれのように逞しかったが、生憎とズボンを履いていない。帆村は怪人の自動車を追いかけるひまひまに、どてらの禍をくりかえしくりかえし後悔していた。