Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
こわく
蠱惑
豊島 与志雄
Lisez 蠱惑 (こわく) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 765 caractères · 28 écrans
通りでも見たようだ。旅の記憶にも彼の顔がある。それから私はのび上って記憶の地平線の彼方に彼を探した。幼い折、小児の折、私が生れない前、其処にも彼の顔がある。……然しどうも明瞭としない。妙に紛糾したものが私の頭の中に醸されて渦を巻いている。
――その晩は妙に私は喉が渇いていた。それで紅茶を二杯のんで林檎を食った。その時丁度彼も紅茶を二杯のみ林檎を食ったのだ。
林檎の皮をむいたのを盛った皿を彼の前に置いて、そのまま足を返した女中は、私の方をちらとふり向いて袖を口にあててくすりと笑った。
私の心の中に何かがざわざわと騒いだ。その時私は凡てに腹立っていたのだ。それで急いで勘定をして立ち上った。その時彼がふり返って私を見た。その瞬間彼の眼が異様に輝いて私の胸を射た。
――カフェーの中の空気はそれきりまた静まって、私の世界のうちに落ち付いた。私は平和に菓子をつまみ紅茶をのんだ。
或る晩、彼がつと入って来た。その後ろに扉をしめて一寸彼は立ち止った。彼はぐるりと室を見廻して、それから私の方へその気味の悪い眼を据えた。その時私は明瞭と知った。彼は決して私の顔は見なかった。