Classiques japonais avec furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lisez 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 88 970 caractères · 176 écrans
そうして、突かれた紙帳は、穏しく内側へ萎み、裾が、ワングリと開き、鉄漿をつけた妖怪の口のような形となり、細い白い手が出た。
「!」
悲鳴と共に、山口という武士はのけぞり、片足を宙へ上げ、それで紙帳を蹴った。しかし、すぐに、武士は、足から先に、紙帳の中へ引き込まれ、忽ち、断末魔の声が起こり、バーッと、血飛沫が、紙帳へかかる音がしたが、やがて、森然と静まってしまった。角右衛門は、持っていた燭台を抛り出すと、真っ先に逃げ出し、つづいて、紋太郎が逃げ出した。
しかし片岡という武士は、さすがに、同宿の誼みある浪人の悲運を、見殺しに出来ないと思ったか、夢中のように、紙帳へ斬り付けた。とたんに、紙帳の裾が翻り、内部から掬うように斬り上げた刀が、廊下にころがったままで燃えている、燭台の燈に一瞬間輝いた。
「わ、わ、わーッ」と、苦痛の声が、片足を股から斬り取られ、四つ這いになって、廊下を這い廻っている武士の口から迸った。紙帳の中はひっそりとしていた。
こういう間も、キリキリという、轍でも軋るような音は、屋敷の周囲を巡って、中庭の方へ移って行った。
(何んの音だろう?)と、四人の浪人が不審を打ったように、その音に不審を打ったのは、中庭に近い部屋に寝ていた、伊東頼母であった。