Classiques japonais avec furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lisez 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 88 970 caractères · 176 écrans
(どうしよう?)
この時、忽然と思い出されたは、やはり伊藤一刀斎の、剣道の極意を詠った和歌であった。
(切り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。……そうだ、身を捨ててこそ!)
頼母は猛然と斬り込んだ。
と、その瞬間、左門は、水の引くように、滑らかに後へ退いた。
(逃げるぞ!)
頼母は驚喜した。自分の気勢に恐れて、左門が逃げたと思ったからであった。頼母は追った。
何んたる軽捷! 左門は、背後ざまに縁の上へ躍り上がった。構えは? 依然として逆ノ脇! そこへ柳が生えたかのように、嫋かに、少し傾き、縁先まで追って来た頼母を見下ろしている。危ないかな頼母! 左門の、例の、肩から左胴まで柔らかに湾曲している腕が延び、その手に握られて、背後ざまに隠されている刀が、電光のように閃めき出た時、お前の脳天は、鼻から頤まで、切り割られるのを知らないのか!
それにしても左門は、何んのために縁まで退いたのであろう? 暗い部屋の中の、灰白い紙帳を背後にして立っている左門が、心の中で叫んでいる声を聞いたなら、その理由を知ることが出来よう。
「父上よ父上よ、あなたを辱かしめ、あなたを憤死させました、忠右衛門の忰頼母めを、今こそ討ち取りまして、父上の怨みの残りおります紙帳へ、その血を注ぐでございましょう。