Classiques japonais avec furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lisez 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 88 970 caractères · 176 écrans
しかし、彼はそれをしなかった。何故だろう? 蜘蛛が、自分の張った網へ、蝶が引っかかろうとするのを、網の片隅に蹲居りながら、ムズムズするような残忍な喜悦をもって、じっと眺めている。――それと同じ心理を、左門が持っているからであった。
まだ彼は動かなかった。
しかし彼には、紙帳の彼方に、刀を構え、斬り込もう斬り込もうとしながらも、こっちの無言の気合いに圧せられ、金縛りのようになっている、頼母の姿が、心眼に映じていた。
彼は、姿を見せずに、気合いだけで、ジリジリと、相手の精神を疲労れさせているのであった。
斬り下ろした左門
神気の疲労が極点に達した時、相手は自然に仆れるか、自暴自棄に斬りかかって来るか、二つに一つに出ることは解っていた。そこを目掛け、ただ一刀に仕止めてやろう。――これが左門の狙いどころなのであった。
彼の観察は狂わなかった。頼母は、凋んだ朝顔を逆さに懸けたような形の紙帳の、その萼にあたる辺を睨み、依然として刀を構えていたが、次第に神気が衰え、刀持つ手にしこりが来、全身に汗が流れ、五体に顫えが起こり、眼が眩みだして来た。……と、不意に一足ヒョロリと前へ出た。