Classiques japonais avec furigana
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さいぎょうのめ
西行の眼
下村 湖人
Lisez 西行の眼 (さいぎょうのめ) de 下村 湖人 (しもむらこじん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 3 096 caractères · 7 écrans
同時に、彼の胸のなかに渦巻いていた黄臭い煙も、何処へやら消えうせて行った。そして、室にみなぎるものは、秋のゆうべの、うっすらとした寂かな光のみであった。
かなり永い間、二人はその寂光のなかに、二つの温かい石像のように坐っていた。
やがて文覚はしずかに眼を落し、頭をたれて、西行に仏の道を問うた。それから二人のほがらかな話声が永いこと室外にもれて、文覚の弟子たちの耳をそばだてさした。
西行が、再び瓢然として、その寒そうな姿を神護寺の門外に運び去った時、弟子たちは、かねての豪語にも似ぬ文覚の態度を詰った。
文覚の答は、しかし簡単であった。
「西行はわしに殴られるような男ではない。わしこそ、うんと西行に殴って貰わねばならぬのじゃ。」
仏門にはいったからには、西行のように、一切の名利を捨てて一所不住の生活をするのが本筋なのか、それとも、人間であるからには、文覚のように、あくまでも人を動かし、世と戦うことを忘れてはならないのか、それは、しばらく別として、ここでわれわれの考えて見たいのは、二人の魂の落ちつくどころである。火のような文覚の眼と、水のような西行の眼が、何を意味するかである。