Classiques japonais avec furigana
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ちゅうもんちょう
註文帳
泉 鏡花
Lisez 註文帳 (ちゅうもんちょう) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 33 770 caractères · 67 écrans
上口から躍込むと、あしのあとが、板の間の濡れたのを踏んで、肝を冷しながら、明を目的に駆けつけると、洋燈は少し暗くしてあったが、お杉は端然坐ったまま、その髷、その櫛、その姿で、小鍋をかけたまま凍ったもののごとし。
ただいつの間にか、先刻欽之助が脱いだままで置いて寝に行った、結城の半纏を被せかけてあった。とお杉はこれをいって今もさめざめと泣くのである。
五助、作平は左右より、焦って二ツ三ツ背中をくらわすと、杉はアッといって、我に返ると同時に、
「おいらんが、遊女が、」と切なそうにいった。
半纏はお若が心優しく、いまわの際にも勦ってその時かけて行ったのであろう。
後にお杉はうつつながら、お若が目前に湯を取りに来たことも、しかもまくり手して重そうに持って湯殿の方へ行ったことも、知っていたが、これよりさき朦朧として雪ぢらしの部屋着を被た、品の可い、脊の高い、見馴れぬ遊女が、寮の内を、あっちこっち、幾たびとなくお若の身に前後して、お杉が自分で立とうとすると、屹と睨まれて身動きが出来ないのであったと謂う。
とこういうべき暇あらず、我に復るとお杉も太くお若の身を憂慮っていたので、飛立つようにして三人奥の室へ飛込んだが、噫。