Classiques japonais avec furigana
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へんさいじょき
貢太郎見聞録
田中 貢太郎
Lisez 貢太郎見聞録 (へんさいじょき) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 29 162 caractères · 59 écrans
昌平橋を渡って須田町へと往った。そこには万世橋駅と高架線の線路と、街頭に建った銅像とが残っているのみであった。他は焼け残りの土蔵、四壁ばかり残った石造の建物、火の入った金庫、鉄骨、流れ藻のように手足に絡まる電線、石、瓦、煉瓦、灰、消え残りの火、煙。私は荒漠たる焼け跡を通って本石町の方へ往き、そこから新常盤橋を渡って東京駅へと往った。火災を免がれた東京駅付近の大建築物が、地震の損害を受けていても魏然として立っているのが非常に頼もしそうに思われた。
東京駅の構内にも避難者が入っていた。私は駅長室へ往って汽車のことをしらべた。汽車の墜落は事実であったが、私の心配は杞憂に終った。私ははじめの予定通り本所に往くことにして、呉服橋を渡り、それから日本橋の街路を横切って、白木屋の焼け跡に沿うて往きかけたが、本石町と馬喰町とに焼け跡を弔うてやりたい書肆のあることを思いだしたので、引き返し、欄干の粧飾の焼けて鎔けかけた日本橋を渡って、外形ばかり残った三越の建物を見ながら、また本石町の四辻へと往って、そこから右に折れた。
風が火のほとぼりと灰とを吹いた。それに空には暑い陽が燃えていた。