Classiques japonais avec furigana
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へんさいじょき
貢太郎見聞録
田中 貢太郎
Lisez 貢太郎見聞録 (へんさいじょき) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 29 162 caractères · 59 écrans
私に力をつけられて家内は起きあがった。家はゆらゆらとして足許が定まらなかった。私は末の児の胴から上を持ち、家内はその下を持って、姉の児を衝き飛ばすようにして先に立てて二階へあがった。
「大丈夫、大丈夫」
家内は倒れかけた襖に掴まろうとして、ひょろひょろと歩いた。二軒長屋になった隣との境の壁がぬき板に沿うてひびわれるのが見えた。私は末の児を抱きかかえたなりに、はらはらとして立っていた。
戸外の方では物の倒れる音、瓦の落ちて砕ける音、その音の間に泣き叫ぶたくさんの人声が波の打つように聞えた。
「和智君はどうしたろう」
和智君の姿はもう見えなかった。私が和智君のことに気がついた時には、もう地震は小さくなっていた。
「やんだ、やんだ、この隙に戸外へ出よう」
私は末の児を抱き、家内は姉の児の手を曳いて、そそくさと下へとおりた。地の震いはひどく小さくなっていた。家内は土間へおりて姉の児に下駄を履かしたので、私は手にしていた末の児をその背に乗せた。
家内はそのまま出て往った。私は瓦が落ちやしないかと思って出て往く一行の後を見送りながら、土間へおりて下駄を履き、追っかけるように玄関口へと出た。