Classiques japonais avec furigana
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へんさいじょき
貢太郎見聞録
田中 貢太郎
Lisez 貢太郎見聞録 (へんさいじょき) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 29 162 caractères · 59 écrans
三四人の者が口口に何か叫びながら潰れた家の取付きの所で騒いでいた。何事であろうかと思ってその傍へ寄って往った。
「どうしたのです」
「二人敷かれてますよ」
知合いの八百屋の豊というのがそう言って、潰れた家に圧されて歪んだシナ人の下宿の入口から入って往こうとしたが、扉が締っていて入れないので、皆で瓦を掻き除けて屋根を破ることにした。私もそれに手を貸して瓦を剥いだ。地震に逃げ迷うている人びとがその傍を狂気のようにして往来した。
「火事だ」
大砲を打つような響きが続けさまに起った。二人の男は潰れた家の屋根の上にあがって、柱の折れたので内の方をまぜるようにしていた。
「大丈夫だよ、大丈夫だよ」
その時地の底からでも聞えて来るように女の泣き声が聞えて来た。
「もうすぐだよ、すぐだよ、心配しないが好いよ」
めりめりと屋根の破れる音がするかと思うと、一人の男がしゃがんで柱の折れを入れた所へ手をやった。
「よし、来た、それ、よいしょ」
髪の乱れた色の青い女が曳き出された。女はひいひい泣いていた。女は出されるなり骨のないようによろよろとなった。私はあがって往ってその女を肩にかけた。