Classiques japonais avec furigana
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れんかんき
連環記
幸田 露伴
Lisez 連環記 (れんかんき) de 幸田 露伴 (こうだろはん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 49 281 caractères · 95 écrans
又、泥障一ト懸持来れ、という。馬の泥障などは、臨終近き人に何の要あるべきものでも無く、寺院の物でもないが、とにかく取寄せて持来ると、身を掻抱かせて起上り、それを結びて吾が頸に懸けよ、という。是非なく言葉の如くにすると、増賀は強いておのが左右の肱を指延べて、それを身の翼のようになし、古泥障を纏いてぞ舞う、と云って二三度ふたふたとさせて、これ取去れ、と云った。取去って後、春久は、これは何したまえる、と恐る恐る問うと、若かりし頃、隣の房に小法師ばらの多く有りて笑い罵れるを覗きて見しに、一人の小法師、泥障を頸に懸けて、胡蝶胡蝶とぞ人は云えども古泥障を頸にかけてぞ舞うと歌いて舞いしを、おかしと思うたが、年頃は忘れたに、今日思い出られたれば、それ学びて見たまで、とケロリとしていた。九十に近い老僧が瘠せ枯びた病躯に古泥障を懸けて翼として胡蝶の舞を舞うたのであった。死に瀕したおぼえのある人は誰も語ることだが、将に死せんとする時は幼き折の瑣事が鮮やかに心頭に蘇えるものだという。晴れた天の日の西山に没せんとするや、反って東の山の山膚までがハッキリと見えるものだ。増賀上人の遥に遠い東の山には仔細らしい碁盤や滑稽な胡蝶舞、そんな無邪気なものが判然と見えたのであろう。