Classiques japonais avec furigana
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さけぬさんざ
避けぬ三左
山本 周五郎
Lisez 避けぬ三左 (さけぬさんざ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 846 caractères · 22 écrans
しかしその翌朝、まるで思いがけないことが出来して、彼の計画はいっぺんに破れ去った。
思いがけぬ事とは「出陣進発」の命令である、本軍を発する先行として、榊原康政の軍の一部に、まず三島駅まで挺身せよという命令がくだったのだ。密令でもあり、急を要した。間にあわなかった。三左衛門は眼をつむって歎息した。
先行隊はすぐに準備を了え、その夜のうちに東へむかった。真田攻めいらい五年ぶりの戦争である、みんな血を沸かしていた、誰も彼もきたるべき合戦と、おのれの功名手柄に対する空想で胸をふくらせていた、――箱根の一番のりはおれだ。なにくそおれだ。おれは小田原の本城の一番のりだ。それはおれの物だ、まあ見ていろ。かれらは互いにそう云って勢いたった。
夜明けちかく、江尻の駅へさしかかったときである、うしろから馬をとばして追って来た者があった。
「国吉はいないか、国吉はどこだ」そう呼びながら、乗りつけて来た馬を隊列に沿って進めるうち、ようやく聞きつけた三左衛門が出て来た。
「国吉三左衛門はここにおる」
「おお国吉か」馬からとび下りたのは、鷲尾八郎兵衛であった。ひどくとばせて来たとみえて、小具足の下に着たよろい垂衣はぐっしょり汗にひたっていた。