Classiques japonais avec furigana
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そらとぶあくま
酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕
酒井 嘉七
Lisez 酒井嘉七探偵小説選 〔論創ミステリ叢書34〕 (そらとぶあくま) de 酒井 嘉七 (さかいかしち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 471 caractères · 28 écrans
こうした方法によって(もし、そうした事を希望するならば)二階に在る人物を完全に隔離することが出来る。――いうまでもなくこうした目的のために、この土蔵がいつかの日に建造されたことは疑いはない。
部屋かずは二つあって、階段を上ったところが四畳であり、その奥に十畳の間、それに二間の立派な本床が附いている。この十畳と四畳との部屋つづきの両側に一間幅の廊下があり、採光は普通の土蔵の、あの特殊な窓を少し大きくしたものが、両側に三個ずつ附いている。従って、陽の光はまず申分なく流れ込む。洗面所、手洗場は階段を上り切った真横の一間を区切り、古風な趣きをさえ呈するものである。
私はこの二階に異常な興味を感じた。興味は執着に変じた。蔵の持主が自分の病身の独身者を理由として、契約に難色を見せると、私は早速と自分の身の廻りを委託するための老女を雇傭した。希望以上の借受料を支払うことを暗にほのめかした。そして遂にこの「離れの二階」を手に入れたのである。
○月 ○日
靄が濃い。大川の面を軽く吹き渡ってきた一陣の風が小川にかかった新橋の辺りの白い気体をそっと払いのけると、稀薄になったその部分にすッと雲のかたまりのような、新しい靄がすーッと動いて来て、たちまちもとのように、辺り一面を白い海にしてしまう。