Classiques japonais avec furigana
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じゅうべえさんのいっか
重兵衛さんの一家
寺田 寅彦
Lisez 重兵衛さんの一家 (じゅうべえさんのいっか) de 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 7 089 caractères · 14 écrans
他人の軽微な苦痛を己が享楽の小杯に盛ろうとする不思議な心理がいかなる善良な人々の心の奥にも潜在することを教えてくれたようである。それから、冒険というものに対する本能的な興味の最初の小さな焔に点火してくれたとも考えられる。
この頃活動写真で色々な空中戦の壮烈な光景を見せられる。空の勇士、選りぬきのエースが手馴れの爆撃機を駆って敵地に向かうときの心持には、どこかしら、亀さんが八かましやの隠居の秘蔵の柿を掠奪に出かけたときの心持の中のある部分に似たものがありはしないか。こんな他愛のないことを考えることもある。それはとにかく、亀さんが鳥人になったらおそらく人並以上の離れ業を演じ得る名操縦士になったことであろう。
亀さんの妹の丑尾さんとはあまり一緒に遊ぶことがなかったようである。その頃は男の子と女の子が遊んでいると、他の遊び仲間から「おとことおなごとおにやんべ、やんがておややができやんしょ」と云って囃し立てられるのであった。しかしただ一度ある小春日のわが家の門前で起った些細な出来事だけがはっきり印象に残っている。多分七、八歳くらいの自分と五、六歳くらいの丑尾さんとが門前のたたきの斜面で日向ぼっこをしていた。