Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

のわき

野分

夏目 漱石

Lisez 野分 (のわき) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 93 508 caractères · 189 écrans

Aozora Bunko

「エヘヘヘ御冗談を」

「先生」

「何ですか」

「この原稿を百円で私に譲って下さい」

「その原稿?……」

「安過ぎるでしょう。何万円だって安過ぎるのは知っています。しかし私は先生の弟子だから百円に負けて譲って下さい」

道也先生は茫然として青年の顔を見守っている。

「是非譲って下さい。――金はあるんです。――ちゃんとここに持っています。――百円ちゃんとあります」

高柳君は懐から受取ったままの金包を取り出して、二人の間に置いた。

「君、そんな金を僕が君から……」と道也先生は押し返そうとする。

「いいえ、いいんです。好いから取って下さい。――いや間違ったんです。是非この原稿を譲って下さい。――先生私はあなたの、弟子です。――越後の高田で先生をいじめて追い出した弟子の一人です。――だから譲って下さい」

愕然たる道也先生を残して、高柳君は暗き夜の中に紛れ去った。彼は自己を代表すべき作物を転地先よりもたらし帰る代りに、より偉大なる人格論を懐にして、これをわが友中野君に致し、中野君とその細君の好意に酬いんとするのである。