Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ななこ

野菊の墓

伊藤 左千夫

Lisez 野菊の墓 (ななこ) de 伊藤 左千夫 (いとうさちお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 71 271 caractères · 144 écrans

Aozora Bunko

表通りで夜番の拍子木が聞える。隣村らしい犬の遠ぼえも聞える。おとよはもはやほとんど洗濯の手を止め、一応母屋の様子にも心を配った。母屋の方では家その物まで眠っているごとく全くの寝静まりとなった。おとよはもう洗い物には手が着かない。起ってうろうろする。月の様子を見て梅のかおりに気づいたか、

「おおえいかおり」

そっと一こと言って、枝折戸の外を窺う。外には草を踏む音もせぬ。おとよはわが胸の動悸をまで聞きとめた。九十九里の波の遠音は、こういう静かな夜にも、どうーどうーどうーどうーと多くの人の睡りをゆすりつつ鳴るのである。さすがにおとよは落ちつきかね、われ知らず溜息をつく。

「おとよさん」

一こえきわめて幽かながら紛るべくもあらぬその人である。同時に枝折戸は押された。省作は俄かに寒けだってわなわなする。おとよも同じように身顫いが出る。這般の消息は解し得る人の推諒に任せる。

「寒いことねい」

「待ったでしょう」

おとよはそっと枝折戸に鍵をさし、物の陰を縫うてその恋人を用意の位置に誘うた。

おとよは省作に別れてちょうど三月になる。三月の間は長いとも短いともいえる、悲しく苦しく不安の思いで過ごさば、わずか百日に足らぬ月日も随分長かった思いがしよう。