Classiques japonais avec furigana
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こんじきのし
金色の死
谷崎 潤一郎
Lisez 金色の死 (こんじきのし) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 997 caractères · 46 écrans
私の家は既に二三年も前から兎角営業不振に陥り、多くもあらぬ動産不動産は追い/\人手に渡って、到底此の儘店を維持する事は困難になって居ました。然るに私が中学を卒業する半歳ばかり前に、突然父は死んで了ったのです。島田家の総領息子たる私は、一人の母と三人の弟妹とを抱えて、此先如何にして一家を支えて行こうかと案じ煩いました。父が遺して行った諸種の負債を整理して見ると、私等母子の手に剰された遺産と云うものは、僅二千円足らずの株券があるばかりでした。結局私は将来の希望を取換えて、工科をやるか、医科をやるか、せめて法科にでも入学するように親類から奨められましたが、私は頑として承知しませんでした。「どうしても文学をやり通したい。昔のような贅沢は出来ないまでも、一家の者に決して不自由はさせないから是非芸術家として身を立てたい。」こう云って、私はます/\その志を強固にしたのです。
私の一家が此のような窮境に陥った間に、岡村君の財産は貧乏揺ぎもしませんでした。彼の資産は普通一遍の打撃ぐらいで破壊されるにはあまりに大き過ぎたのです。法律が許して居る年齢に達したならば、彼は一日も早く伯父の監督を離れて、自分の全財産を自由に支配して見たいと云う事を、度び度び私に話しました。