Classiques japonais avec furigana
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すずきもんど
鈴木主水
久生 十蘭
Lisez 鈴木主水 (すずきもんど) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 827 caractères · 26 écrans
月が出ると、不忍池を見おろす二階の大広間に席を移してさかんな酒宴になった。紅い萩の裾模様のある曙染めの小袖に白地錦の帯をしめた愛妾のお糸の方が、金扇に月影をうつしながら月魄を舞っていると、御相伴の家中が控えた次ノ間の下座から、
「女め、誰も知らぬと思って、晴がましく舞いおるわ」
という声がかかった。
最初の一と声は、三味線や琴の音に消され、近くの者しか気がつかなかったが、野太い声でつづいて三度ばかり叫んだので、こんどは誰の耳にもはっきりと聞えた。
唄と囃が一時にやみ、風が落ちて海が凪いだような広間の上座から、播磨守が癇を立てた蒼白んだ顔で次の間のほうを睨めつけながら、
「いま、なにか申した者、これへ出ろ」
と歯軋りをするような声をだした。
主水は朋輩のうしろに坐って、膝に手を置いてうつむいていたが、そう言われると、逃げ隠れもできない。はっといって広間の閾際まで膝行り出て、そこで平伏した。
「何者だ、名を名乗れ」
播磨守が膝を叩いて叱咤した。主水は顔をあげてこたえた。
「御鉄砲三十梃頭、鈴木主水にございます。なにとぞ、お見知りおきを」
「鉄砲持ちには出来すぎた面だ。