Classiques japonais avec furigana
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うし
鎧櫃の血
岡本 綺堂
Lisez 鎧櫃の血 (うし) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 48 702 caractères · 99 écrans
それで毎日大入りならば、こんなボロイ商売はない。
友蔵兄弟も大よろこびで、この分ならば結構な年の暮が出来ると、お常も共に喜んでいると、ここに一つの事件が出来した。
かの奥山の由兵衛は、鯨で大損をしてから、いわゆるケチが付いて、どうも商売が思わしくない。その後にもいろいろの物を出したが、みんなはずれる。したがって、借金は出来る、やけ酒を飲むというわけで、ますます落目になって来た。その由兵衛の耳にはいったのが両国の『虎の子』で、友蔵の小屋は毎日大入りだという評判。余人ならばともあれ、自分のかたきと睨んでいる友蔵の観世物が大当りと聞いては、今のわが身に引きくらべて由兵衛は残念でならない。恨みかさなる友蔵めに、ここで一泡吹かせてやろうと考えた。
由兵衛も同商売であるから、インチキ仲間の秘密は承知している。千里の藪で生捕りましたる虎の子が本物でないことは万々察している、そこで先ずその正体を見きわめてやろうと思って、手拭に顔をつつんで、普通の観客とおなじように木戸銭を払ってはいったが、素人と違って耳も眼も利いているから、虎の正体は大きい猫であって、その啼き声をごまかすために銅鑼や太鼓を叩き立てるのだという魂胆を、たちまちに看破ってしまった。