Classiques japonais avec furigana
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うし
鎧櫃の血
岡本 綺堂
Lisez 鎧櫃の血 (うし) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 48 702 caractères · 99 écrans
その木曾街道で測らずも熊の胆を売る娘に出逢ったのである。七つのときに別れたのであるが、その幼な顔が残っている。年ごろも丁度同様である。気をつけて見ると、右の耳の下に証拠の黒子がある。さらに念のために詮議すると、左の二の腕に青い痣があるという。もう疑うまでもない、この娘はわが子であると、七兵衛は思った。彼は喜んで涙を流した。
正直な伊平は思いもよらぬ親子のめぐり逢いに驚いて、異議なくかれを実の親に引渡すことになったので、七兵衛は多分の礼金を彼にあたえて別れた。お糸という名は誰に付けられたのか好く判らないが、娘はむかしのお元にかえって、十一年目に再会した父と共に奈良井の宿を立去った。甥の梅次郎も手代の義助も、不思議の対面におどろきながら、これも喜び勇んで付いて行った。
江戸を出るときには男三人であったこの一行に、若い女ひとりが加わって帰ったのを見た時に、近江屋の家は引っくり返るような騒ぎであった。女房も番頭も嬉し泣きに泣いた。近江屋からは町役人にも届け出て、お元は再びこの家の娘となった。この話もこれで納まれば、筆者もめでたく筆をおくことが出来るのであるが、事実はそれを許さないで、さらに暗い方面へ筆者を引摺って行くのであった。