Classiques japonais avec furigana
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うし
鎧櫃の血
岡本 綺堂
Lisez 鎧櫃の血 (うし) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 48 702 caractères · 99 écrans
亭主は吉次郎をよんで訊いた。
「河岸できょう仕入れたときに、こんな荒い奴はなかったように思うが、どうだろう。」
「そうですね。こんな馬鹿にあらい奴はいませんでした。」と、吉次郎も不思議そうに言った。
「どうして蜿り込んだか知らねえが、大層な目方でしょうね。」
「おれは永年この商売をしているが、こんなのを見たことがねえ。どこかの沼の主かも知れねえ。」
ふたりは暫くその鰻をめずらしそうに眺めていた。実際、それはどこかの沼か池の主とでもいいそうな大鰻であった。
「なにしろ、囲って置きます。」と、吉次郎は言った。「近江屋か山口屋の旦那が来たときに持ち出せば、きっと喜ばれますぜ。」
「そうだ。あの旦那方のみえるまで囲っておけ。」
近江屋も山口屋も近所の町人で、いずれも常得意のうなぎ好きであった。殊にどちらも鰻のあらいのを好んで、大串ならば価を論ぜずに貪り食うという人達であるから、この人達のまえに持ち出せば、相手をよろこばせ、あわせてこっちも高い金が取れる。商売として非常に好都合であるので、沼の主でもなんでも構わない、大切に飼っておくに限るという商売気がこの親子の胸を支配して、二匹のうなぎは特別の保護を加えて養われていた。