Classiques japonais avec furigana
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あまよぞうし
雨夜草紙
田中 貢太郎
Lisez 雨夜草紙 (あまよぞうし) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 7 029 caractères · 14 écrans
ことがあるだろう、あれが吾輩の傍にいた証拠だ」
三造は膝を直してかしこまっていた。彼はその場合、何の矛盾も感ぜずに、非常な敬虔な心を持って先輩に対していた。油井伯爵を首領に戴いた野党の中の智嚢と云われた木内種盛は、微髭の生えた口元まで、三十年前とすこしも変らない精悍な容貌を持っていた。
「しかし、もう、何も往くべき処へ往った、我が党の足痕へは、もう新しい世界の隻足が来ている、吾輩の魂も、これから永遠の安静に入るべき時が来たから、最後の言として、君にまで懺悔して置きたいことがあってやって来た」
三造は頭をさげた。
「君は、吾輩が至誠病院で斃れたことを覚えているだろう」
眼に残っている金盥の血、俄然容態が変って危険に陥ったと云う通知を得て、あたふたと駈つけて往く先輩の一人に跟いて、至誠病院の病室へ入った三造は、呼吸を引きとったばかりの木内の顔に、白いガーゼのかけてあるのを見た。その枕頭には死人の吐いた血が金盥の中に冷たく光っていた。
(しまった、しまった、しまった)
感情家の先輩は、両手をひしと握りしめて、その拳を胸のあたりで上下に揮り動かしながら、床をどしどしと踏んだ。