Classiques japonais avec furigana
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ゆきたたき
雪たたき
幸田 露伴
Lisez 雪たたき (ゆきたたき) de 幸田 露伴 (こうだろはん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 28 132 caractères · 56 écrans
如何様の事にても、仮令臙脂屋を灰と致しましても苦しゅうござりませぬ、何卒彼品御かえし下されまするよう折入って願い上げまする。真実、斯の通り……」
と誠実こめて低頭するを、
「いやでござる。」
と膠も無く云放つ。
「かほどに御願い申しましても。」
「くどい。いやと申したら、いやでござる。」
客は復び涙の眼になった。
「余りと申せば御情無い。其品を御持になったればとて其方様には何の利得のあるでも無く、此方には人の生命にもかかわるものを……。相済みませぬが御恨めしゅう存じまする。」
「恨まれい、勝手に恨まれい。」
「我等の仇でもない筈にあらせらるるに、それでは、我等を強いて御仇になさるると申すもの。」
「仇になりたくばならるるまで。」
「それでは何様あっても。」
「いやでござる。もはや互に言うことはござらぬ。御引取なされい。」
「ハアッ」
と流石の老人も男泣に泣倒れんとする、此時足音いと荒く、
「無作法御免。」
と云うと同時に、入側様になりたる方より、がらりと障子を手ひどく引開けて突入し来たる一個の若者、芋虫のような太い前差、くくり袴に革足袋のものものしき出立、真黒な髪、火の如き赤き顔、輝く眼、年はまだ二十三四、主人の傍にむんずと坐って、臙脂屋の方へは会釈も仕忘れ、傍に其人有りともせぬ風で、屹として主人の面を見守り、逼るが如くに其眼を見た