Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ゆきのたけしとうげ

雪の武石峠

別所 梅之助

Lisez 雪の武石峠 (ゆきのたけしとうげ) de 別所 梅之助 (べっしょうめのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 5 818 caractères · 12 écrans

Aozora Bunko

ふりつんだ雪のおもてには、白金の粉が宿っていた。十一時渋池、十二時大曲。ふりかえるごとに、山々が数をます。並んでいるのが穂高の三峰、かなたが御嶽。雪は次第次第に深くなった。もう人の足跡はない。兎の足あとらしい三つ指ついたのが、かなたの谷へ、長く長く引いている。足の甲だけが雪に埋まったのは、とうの前。雪は脛に及び、膝に及び、腿におよび、あらぬ所に足ふみこめば、腰にすら及ばんとする。M君がさす金剛杖の手許わずかに残る所もあった。夏ならば何なるまじき境、しかも冬の信濃の山は、一歩ごとに私の知らぬ世界であった。私たちはただもう進む。案内者は、いつか先へいってしまった。足の弱い私をまもりつつ、後からM君が気づかわしそうに辿る。足は滑る、金剛杖は流れる。雪の上ならで、雪の中を滑るのだから、きわめて緩かに、左手の谷へとおちてゆく。おちるなおちるなと思っても足がとまらぬ。それが滑稽でもあり、無念でもある。もう五千尺以上の高み、それに尾根ゆえ、これという樹も育たぬ。灌木は雪にうもれて、手がかりにならぬ。それでも、どうやら踏止まった。私たちは袴越山(五千七百八十尺)の胸のあたりをとおっていたのだ。