Classiques japonais avec furigana
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らいほうとうものがたり
雷峯塔物語
田中 貢太郎
Lisez 雷峯塔物語 (らいほうとうものがたり) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 606 caractères · 45 écrans
「そうですか、……それでは、また、お眼にかかります、どうもありがとうございました」
女はのこり惜しそうな顔をして別れて往った。小婢は包みを持って後から歩いていた。許宣ものこり惜しいような気がするので、そのまま立っていて眼をやると、もう、二人の姿は見えなかった。許宣は気が注いて船頭に一言二言別れの詞をかけて、楊柳の陰から走り出て湧金門を入り、ぎっしり簷を並べた民家の一方の簷下を歩いた。彼はそうして近くの親類へ往って傘を借りようとしているのであった。彼の眼の前にはさっきの女の姿が花のように映っていた。
許宣は三橋巷の親類へ往った。親類では夕飯の時刻だからと言って引留めようとしたが、許宣は家の外に幸福が待っているような気がして、家の内に置かれるのが厭だから、強いて傘ばかり借りて外へ出た。ぱっとさした傘に絡まる軽い爽かな雨の音。
洋場頭へ往ったところで、聞き覚えのある優しい女の声がした。
「おや、あなた」
許宣は左の方を振り向いた。そこの茶館の簷下にさっきの白娘子が独り雨を避けて立っていた。
「や、あなたでしたか、さっきは失礼しました」
「さきほどはありがとうございました、どうも雨がひどいものですから、婢に傘を取りに往ってもらって、待ってるところでございます」