Classiques japonais avec furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lisez 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 162 593 caractères · 325 écrans
頑固な牧師のようにひそかに抱いているある種の嫌悪は、その時も敏感な蛇のように鎌首を擡げていた。母親の顔、東銀子の薄い胸細い足、それらが泛んでは消え、消えては泛んだ。そのため、豹一はもっとも楽しかるべきときでさえ、残酷な犯罪を犯したあとのようなけわしい表情になっていた。嫌悪しているものに逆に惹きつけられるという、捨鉢な好奇心は彼に慟哭の想いをさせてしまったのである。
義務を果したという、自尊心の満足もこの時はてんで役に立たなかった。なぜなら、彼の自尊心は矢野の顔を想い出すことによって、勝利感どころか、全く粉微塵になってしまったのだ。
(あいつはこの女を自由にしていたのだ!)自分を情けない状態に置くためには、そのことを思うだけで充分だった。(この女もあいつの自由になることを喜んでいたのだ! 丁度こんな風に……)それを感覚的に想像するに及んで、彼の苦悩は極まった。
自尊心を問題外に考えても、感覚的な嫉妬とともに始った最初の恋ほど苦しいものはまたとあるまい。女の魅力が増せば増すほど、嫉妬の苦しみは大きいのだ。
可哀相に豹一は夜通し悩み続けた。ことにやりきれなかったのは、彼がいままで嫌悪していたことは、女の意志に反して行われるものと思っていたのに、意外にもそれは思いちがいだったということだった。