Classiques japonais avec furigana
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ひじょうのあい
非情の愛
豊島 与志雄
Lisez 非情の愛 (ひじょうのあい) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 831 caractères · 24 écrans
」
それから波多野は、彼女を今夜の同席者として秦に紹介した。
秦はぎごちないお辞儀をした。
「僕は……一向に、馴れませんから、よろしく願います。」
「わたくしこそ、どうぞよろしくお願い致します。」
彼女はちらっと眼を挙げただけだったが、秦は少しくぶしつけなほど彼女を見守った。それから、打ちかけの碁盤に眼をやり、室内を眺めたが、立ち上ってゆき隅っこの卓上の蛭の瓶を取りあげ、ちょっとためらった。
「どうするんだい。」と波多野が尋ねた。
「こんなもの……どこか……。」
瓶を隠すようにして、更に隠し場所を求めていた。
「それも、もう用はあるまい。捨ててしまおうか。」
「何でございますの。」
千枝子は、波多野が受取った瓶を更に受取って、その中の蛭を眺めた。
「これ、どうなさいましたの。」
「あちらのお上さんが、肩の欝血を吸わせていたのを、ちょっと、貰ってきたんです。」
千枝子は何とも言わずに、そして別に嫌気も示さずに、瓶の中の蛭をじっと眺めた。ただふしぎそうに眺めた。
その瓶を、波多野は奪うように取上げて、階下へおりてゆき、またすぐあがってきた。――その蛭がどうなったかは明かでないが、恐らく、大田梧郎が瓶のまま堀割にでも捨ててしまったのであろう。