Classiques japonais avec furigana
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かばんのかい
革鞄の怪
泉 鏡花
Lisez 革鞄の怪 (かばんのかい) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 394 caractères · 21 écrans
白襟に消えもしそうに、深くさし入れた頤で幽に頷いたのが見えて、手を膝にしたまま、肩が撓って、緞子の帯を胸高にすらりと立ったが、思うに違わず、品の可い、ちと寂しいが美しい、瞼に颯と色を染めた、薄の綿に撫子が咲く。
ト挨拶をしそうにして、赤ら顔に引添って、前へ出ると、ぐい、と袖を取って引戻されて、ハッと胸で気を揉んだ褄の崩れに、捌いた紅。紅糸で白い爪先を、きしと劃ったように、そこに駒下駄が留まったのである。
南無三宝! 私は恥を言おう。露に濡羽の烏が、月の桂を啣えたような、鼈甲の照栄える、目前の島田の黒髪に、魂を奪われて、あの、その、旅客を忘れた。旅行案内を忘れた。いや、大切な件の大革鞄を忘れていた。
何と、その革鞄の口に、紋着の女の袖が挟っていたではないか。
仕出来した、さればこそはじめた。
私はあえて、この老怪の歯が引啣えていたと言おう。……
いま立ちしなの身じろぎに、少し引かれて、ずるずると出たが、女が留まるとともに、床へは落ちもせず、がしゃりと据った。
重量が、自然と伝ったろう、靡いた袖を、振返って、横顔で見ながら、女は力なげに、すっともとの座に返って、