Classiques japonais avec furigana
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かばんらしくないかばん
鞄らしくない鞄
海野 十三
Lisez 鞄らしくない鞄 (かばんらしくないかばん) de 海野 十三 (うんのじゅうざ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 36 653 caractères · 73 écrans
一頃から思えば、この探偵も深刻にふけて見える。
「猫の子が宙を飛べるものなら、鞄が宙を飛んだって、仔猫の場合以上にふしぎだとはいえないわけですね」
「いや帆村君、それは違うだろう。猫の子が宙を飛ぶのは許さるべきとしても、生なき鞄が宙を飛ぶのは怪談だよ。その怪談に怯やかされてわが五百万の都民は枕を高うして睡れないと山積する投書だ。あれあの籠を見たまえ」と課長は、二つ三つ向こうの部下の机上を指す。それは尤もな風景を見せていた。
「怪談ということでは、この事件の解決はちょっとむずかしいですよ。物理学で行くなら、仔猫も鞄も同じ格です。そしてそらに飛ぶ場合も考えられないことはない。課長さん、そのことについて赤見沢博士の助手の何とかいう婦人に糾してみましたか」
「だめだ、あの小山すみれは。ああいう女は、一旦依怙地となったら、殺されても喋らないものだ。赤見沢はさすがにそれを心得て雇っている。沈黙女史は今のところそっとして置くしかない。しかし――帆村君。生もない鞄がなぜ飛び得ると考えるのか、怪談以外の考え方に於て……。ねえ君、林檎も落ちるよ、星も落ちる、猿も木から落ちる」