Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lisez 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 15 028 caractères · 30 écrans

Aozora Bunko

なるほど大したものだなあ」

と、つぶやいていたが、急に気をかえて、

「ここにいるとわかったら、これで俺の役目はすんだようなものだが、それにしちゃア場所が悪い。どれほどうまく化けこんでも、いずれ藤波に見やぶられるにきまっている。萩之進のほうじゃ、こうまで大掛りに探されているとは知らないから、それでこんなところでまごまごしているんだろうが、こりゃア実にどうもあぶない話。そばへ行って、それとなく耳打ちをしてやろう」

といいながら、ひと波をわけて岡埜の前をまわり、土手をおりて、ふたりのほうへ近づこうとするそのとたん、骨に迫るようなするどい気合とともに、右の肩のあたりに截然とせまった剣気。思わず、

「オッ」

と、叫んで咄嗟に左にかわし、一気に土手下まで駈けおりて足場を踏み、柄に手をかけてキッとふりむいて見ると、誰もいない。岡埜の幟が風にはためいているばかり。

ビッショリと背すじを濡らす悪汗をぬぐいながら、さすがの顎十郎も顔色をかえて、

「実に、どうも凄い剣気だった。うっかりしていたら、まっぷたつになるところ。いまの居合斬りは柳生新陰流の鷲毛落。これほどにつかえるやつは、日本ひろしといえども二人しかいない。