Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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いずこへ

風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇

坂口 安吾

Lisez 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) de Sakaguchi Ango (坂口 安吾) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 119 879 caractères · 242 écrans

Aozora Bunko

「このくらい遊んで帰ると、私だって、ちょっと、ぐあいが悪いのよ。あとは野となれ、山となれ、か。あなたの奥さん、さぞ怒っているだろうな。ねえ、マダム、怖い?」女の顔はいつもと違って、まじめであった。

「もう十日、もうひと月、ねえ、私、このへんで稼いで、一緒にいたいな。あなたのマダムをうんと怒らしてやりたいのよ。私、どこかのマダムを二、三人、殺してやりたいわ。厭になっちまうな」と言った。そして笑った。それはもう、いつもの通りの女であった。シンからお人好しの女でも、そんな残酷な気持があるのかな、と、私は面白かった。顔も知らない対象にまで嫉妬だか癇癪だか起している、そのくせ、はっきりした対象にはむしろ嫉妬を起しそうもない女であった。

私はそのとき、矢田津世子は死んでくれれば一番よいのだ、ということをハッキリ気附いた。そして、そんなことを祈っている私の心の低さ、卑しさ、あわれさ、私はうんざりしていた。まったく一と思いに、この女とこのへんの土地で、しばらく住んでみようかと、女には何喰わぬ顔で、思いめぐらしたほどであった。

★

私の心の何物か、大いなる諦め。