Classiques japonais avec furigana
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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
Lisez 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇 (いずこへ) de Sakaguchi Ango (坂口 安吾) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 119 879 caractères · 242 écrans
私は父を知らなかった。そこで私は伝記を読んだ。それは父の中に私を探すためであった。そして私は多くの不愉快な私の影を見出した。父に就て長所美点と賞揚せられていることが私にとっては短所弱点であり、それは私に遺恨の如く痛烈に理解せられるのであった。
父は誠実であった。約をまもり、嘘をつかなかった。父は人のために財を傾け、自分の利得をはからなかった、父は人に道をゆずり、自分の栄達をあとまわしにした。それは全て父の行った事実である。そしてそれは私に於てその逆が真実である如く、父に於ても、その逆が本当の父の心であったと思う。父は悪事のできない男であった。なぜなら、人に賞揚せられたかったからである。そしてそのために自分を犠牲にする人であったと私は思う。私自身から割りだして、そう思ったのである。
私は先ず第一に父のスケールの小ささを泣きたいほど切なく胸に焼きつけているのだ。父は表面豪放であったが、実はうんざりするほど小さな律義者でありながら、実は小さな悪党であったと思う。
私がなぜ殆ど私の無関係なこの老人をスケールの小ささで胸に焼きつけているかというと、私は震災のとき、東京におり、父はもう死床に臥したきり動くことができなかった。