Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しょくま
食魔
岡本 かの子
Lisez 食魔 (しょくま) de 岡本 かの子 (おかもとかのこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 36 911 caractères · 74 écrans
鼈四郎はわたりの風趣を強いて食味に翻訳して味わうとではないが、ここへ彼は来ると、裸麦の匂いや、鶫の腸にまで染みている木の実の匂いがひとりでにした。佐久間町の大銀杏が長屋を掠めて箒のように見える。
彼はこの横町に入り、トンネルを抜け横町が尽きて、やや広い通りに折れ曲るまでの間は自分の数奇の生立ちや、燃え盛る野心や、ままならぬ浮世や、癪に触る現在の境遇をしばし忘れて、靉靆とした気持になれた。それはこの上墜ちようもない世の底に身を置く泰らかさと現実離れのした高貴性に魂を提げられる思いとが一つに中和していた。これを侘びとでもいうのかしらんと鼈四郎は考える。この巷路を通り抜ける間は、姿形に現れるほども彼は自分が素直な人間になっているのを意識するのであった。ならば振り戻って、もう一度トンネルを潜ることによって、靉靆とした意識に浸り還せるかというと、そうはゆかなかった。感銘は一度限りであった。引き返してトンネル横町を徘徊してもただ汚らしく和洋蕪雑に混っている擬いものの感じのする街に過ぎなかった。それゆえ彼は、蛍雪館へ教えに通う往き来のどちらかにだけ日に一度通り過ぎた。