Classiques japonais avec furigana
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たかちほにおもう
高千穂に思う
豊島 与志雄
Lisez 高千穂に思う (たかちほにおもう) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 5 292 caractères · 11 écrans
私の足は疲れきり不随意になりながらも、岩角や砂礫の上を攀じ登っていった。
霧の中から、鉄柵の如きものが仄かに浮き出してき、その先は空漠たる雲霧だ。それが絶頂だった。
私はまず、鉄柵のなかの岩石の堆積に逆さにつきささってる天の逆鉾に向って、暫く瞑目した。それから、地面を匐ってる草の上に腰を下して、携えていたサイダーを飲んだ。この時、煙草を所持していないのに気付いて自ら驚いた。麓の旅館に上衣をぬぎ捨てた折、そのポケットに煙草を置きざりにしたのだ。あれほどのべつに煙草を吸う自分が、今まで煙草のことを忘れていたのが、不思議に考えられた。不思議なのは、この頂上で煙草を所持していないのに気付いても、ただそれだけで、大して吸いたくも思わなかったことだ。煙草などは濃霧のなかに消えてしまえ。
霧そのものは霽れそうになかった。晴天ならば、霧島火山群の十八の主峯、それらが懐く噴火口、遙か遠くには鹿児島湾の風光など、秀麗な眺望が展開する筈であるが、今はただ朦々漠々たる雲霧に四方をとざされているのである。だが、私はそれを憾みとはしなかった。
思いは神代の古えに遡る。神話の世界の雲霧が、そのまま今も、高千穂頂上に渦巻いているのだ。