Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

さかなのえさ

魚の餌

梅崎 春生

Lisez 魚の餌 (さかなのえさ) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 4 827 caractères · 10 écrans

Aozora Bunko

糸の先は針ばかりになっている。餌をとられたのだ。

「バカだな。しっかりしろ」

そう言おうとして、僕はやはり言わなかった。向うも内心ジタバタしているが、別の意味でこちらもジタバタしている。その意識が急に僕の口辺を硬ばらせた。僕はそのまま背を向け、振り返らず、まっすぐに防波堤を岸の方に歩いた。防波堤は岸に近づくにつれて低くなり、満潮時だから海水に没している。膝頭までひたす海水を、はねのけるような気持で進みながら、何だかやり切れない感じがしだいに強くなって来た。子供たちからなめられたような気がしたのか、子供の所業がしゃくにさわったのか、またその所業を見逃した自分がやり切れなかったのか。そしてあいつ等は、餌を盗むのに、沢山の中からよりによってこの俺をえらんだ。どういう目安で俺に白羽の矢を立てたのか、そういうことを考えることは、あまり愉快なことではなかった。連れでもいたら、その連れに話すことで、幾分気持は軽くなるだろうが、僕はその時ひとりだった。口下手な僕は、ことにその頃は性質も湿っていて、防波堤でもどの常連とも会話すら交わしたことはなかったのだ。

まあその日から一週間ばかり経った。