Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖 (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 56 957 caractères · 114 écrans
思うに、今こそ、弦之丞が剣をとっての本相は、かれが平常の、白皙柳眉の柔和仮面をかなぐりすて、獅身夜叉面のおそろしき本体を見するのであろう。
逃げおくれるのを跳び斬りに切ッて放し、なおも疾風! 引ッさげ刀! ピューッと血糊をすごきながら追って走ると、そのうしろへ、
「待てッ、弦之丞――」
とからみついた閃光がある。そぼろ助広の閃光であった。
「なにッ」
と坂の勾配に、惰勢のついた行き足を止めて、ふりかえるや、その真眉間へ、
「かッ!」とばかり、目のくらむような気当と一緒に、猿臂のばしにふりつけてきた岩砕の太刀。
丹石流の呼吸である。
業刀はそぼろ助広、持ち人はいうまでもないお十夜孫兵衛。
チャリン! という音の冴え。双方の鍔へ――鏘然として、まッ青な火が降った。
斬るか、斬られるか。
やるか、とるか。
剣と剣の間には、毛髪をいれる妥協もない。
触れたがさいご、焼金からシューッと青い火花が飛ぶ――火花は生命の目ばたきだ。
豹の四肢のごとく、伸縮の自由な孫兵衛の腕ぶしには、一種の粘力があってなかなかあなどり難い。ことには弦之丞がすでに散々な疲労をおぼえているに反して、その気息には新しい力がある。