Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖 (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 56 957 caractères · 114 écrans
ひどく山の荒れた晩があった。翌朝みると、一本の山栗の大木が、柵をくずして仆れていた。山番の者がそれを繕いにこないうちに、かれはその朽木を引き入れて、草むらの中に隠しておいた。
春の夜も、山荒れのあと二、三日は、冬のような月の冴え方をしていた。世阿弥は真夜中ごろになって、獣のように、間者牢から這いだした。
かれは、青白い月魄をあびて、鬼のように働いた。やがて柵に攀じて外へ辷り出したかと思うと、世阿弥は、隠しておいた朽木を激流の岩に架けて、飛沫のかかる丸木の上を這って渡った。
「俵殿、俵殿……」
やっと尋ねあてた石子牢を覗いて、こう呼んだのは世阿弥である。パラパラパラパラ崖から小石が降っている。その断壁面の荒い岩肌に、藤の森から青い月がさしていた。
「一八郎殿……」と、もう一度、石と石との間をかき分けて、世阿弥が声をかけるとややあって、
「うウ……、た、たれだ!」
と風穴の中で物音がした。――物音はしたが、一八郎もこの深夜に訪れたものを深く怪しんだとみえて、めったに穴口へ顔を寄せてこない。
「俵一八郎殿……。わしは甲賀世阿弥と申すものでござる。阿波の者ではござらぬ。