Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

Lisez 鳴門秘帖 (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 56 957 caractères · 114 écrans

Aozora Bunko

「わしがここにいるということは、まだ世の中から忘れられていなかった。今に! 今に! 誰かくるに違いない」

こういう信念をもったのである。

「しかし? ……」と冷静になってみる時に、世阿弥は、それもまた、あまりにはかない凡情にすぎないのではないかと疑った。

単なる人恋しさから燃える希望ではないかと反省した。

幾多の危険を冒して、ここへ訪ねてきた者に、この姿を彼に見せ、彼の姿を自分が見たところで、果たして何の意義があろう。やはり、それも一つの夢想に過ぎない。一時の煩悩を、よろこばせ、涙ぐませるだけのことではないか。

――とも思うし、いやいや、そうではないとも思いなおした。

この厳しい密領へ、命がけで忍んでくる者があれば、それは、必ずや大きな意義をもたらすものか、求めに来る者でなければならない。

宝暦変以来、密雲につつまれているこの国の内秘。その謎をとき、その秘密の鍵を握っているのは自分だ。

法月弦之丞とやらいう者、また、天満組の万吉とやらいう者が、ここへ来る日があると、俵一八郎がいったのは、そうだ! その鍵を自分へ求めに来るのに相違ない。

永い山牢生活に、自分はあまり愚に返っていた。