Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

Lisez 鳴門秘帖 (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 56 957 caractères · 114 écrans

Aozora Bunko

けれど形の上では、もう誰が目にも、お米は啓之助の囲い女、宅助はその番人という態になっているのを否めない。

ただ、幾分か、お米にとってよろこぶべきことは、あの癆咳の病のかげが、大阪にいた頃より大層よくなっていることだった。瞼のあたりの青いかげや、病的であった頬の肉艶、それがズッと健康らしく見えてきた。

環境が変ったからであろう。

お米の囲われている寮のあり所が、海気と松風に恵まれている地に相違ない。

黙って歩くと道が遠い。

何の用向きをもってきたのか、指して行く剣山の麓までは、まだなかなか道のりがありそうだ。

「こいつはいけねえ、とうとうこじれやすいお米をこじらしてしまった」と、仲間の宅助が後からテクテク供をしながら、少ししゃべりすぎたかなと後悔した。そして、何とかひとつご機嫌をとり結ばなくっちゃ……と思っていると、

「おウい――」と、突然。

うしろのほうから遠呼びに手を振ってくる男がある。

「おーい」とまた一度呼びとめて、こっちへ急いでくる者をふりかえると、顔は見えない、一文字の笠、ヒラヒラするのは縞合羽だ。

「誰だろう。こんな所で呼ばれる者はない筈だが……」